第三章【かっこいい】

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 それとない話で場を盛り上げよう。   「ねえ、シュウくん。私って女の子っぽい?」 「少なくとも、自分にとっての桜庭は女子だ」  やった!  私、ちゃんと女の子してるんだ! 「…………むぅ」  なんて舞い上がってる場合じゃない!!  私だけが盛り上がってどうすんの!  よし、落ち着け。  ちゃんとシュウくんの話を思い出そう。    この子に大接近したことに気づいた直前。  私はご飯が好きだって言った。  それはどうしてか。  答えは簡単『シュウくんに聞かれた』から。  じゃあ、なんで聞いたのかな? 「と、とにかく話を修正しよう。自分は君がどういう思いを皿に乗せるかを聞こうとした。どういう料理にこだわる……という質問は大ざっぱ過ぎてわからない。故に……」 「もしかして、どういうテーマで料理を作るかを聞きたいの?」 「最初から……そう、言っている」  最初から!?  ご、ごめん。私、読解力が足りないのかな。  言ってることが難しくてわからなかった。  だとしたら、私の答えは簡単。  もったいないを意識したものを作ること。  それが料理のテーマ。 「ごめんね。さっきまで決まったテーマでずっと悩んでたから。もったいないをテーマにした料理を作るんだって」 「もったいない?」 「う、うん。あんまりよくわからないけど、卵の殻みたいに本当なら捨てるものをきっちり使おうっていう料理を作ろうって思うんだ」 「食事を作る過程で不要になるものを使った料理。恐らく、桜庭が考えた案では……ない」   「仁神さんが教えてくれたんだ」 「受け売りというわけか。無難な選択だ」  シュウくんが優しい表情で頷く。  なんだかこの言い方、妙に引っかかるなあ。  まるでテストをカンニングしたって糾弾されてるみたいな……。
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