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酢飯を完成させれば、あとは冷ますだけ。
盛り付けさえすれば、食べてもらえる。
大丈夫、きっとうまくいってるから。
桐野先輩に渡された団扇をつかってご飯を冷まそうとした。
その瞬間、
「うん。きっと味は申し分ないね。きちんと全体に酢が混ざってる。料理の経験はどのぐらい?」
「入学してからです。ホントは中二の頃から興味あったんですけど」
「そっか。じゃあ、そのうえで質問」
団扇の風で漂う匂いを嗅ぎながら桐野先輩は笑った。
「この料理、今度はひとりで作れる?」
「わからないです。でも、絶対に作ります!」
「修二郎君はどう思う?」
私の言葉を噛み砕くように聞いた先輩がシュウくんに質問した。
「自分はできると思います。この料理を考えたのは他でもない桜庭日和です。実のところ桐野氏から桜庭日和の協力をしてもいいと聞いたとき、余裕だと思っていました。けれど、そうじゃないと思い知りました」
「どうして?」
「自分は料理の経験者だ。ある程度の料理なら作ることができる。しかし、彼女と違って物事を捻る能力があまりにも乏しい。彼女の構想という土台がなければ、ここに皿を持ってくることすら不可能でした」
シュウくんがさらに言葉を付け加える。
「仮に桜庭日和がこの料理を作れないとしても、新たなものを用意することはできる。同じものを作れと言われれば、それを昇華させられる可能性も大いにあるということです」
「修二郎君がここまで言うなんてね。うん、そうだね。私の一存で合格にしてあげちゃってもいいかな」
桐野先輩がピースサインをこっちに向けた。
そして、
「全部食べたいけど、どうしようかな? 剛健に怒られちゃうなぁ。」
にへらーと笑った桐野先輩。
喜んでくれてよかった。
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