第三章【かっこいい】

23/23
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/207ページ
 私が胸を撫で下ろした矢先、 「あ、電話だ」  私の隣でケータイが震える音がした。  桐野先輩が取り出した液晶画面にはちらりと『けんちゃん』という文字。  そして、ラーメンを啜りながらカメラに向かってとぼけた顔をしている猪谷先輩の姿が……。  うん、何も見なかったことにしよう。 「もしもし? 今ね、日和ちゃんに合格通知出したところだよ」 『◆☆×※Σーーーーーー!!』 「うるさいなぁ。工芸部で縄文土器作ってたのが悪いんじゃん。こういうの、自業自得っていうんだよ」  耳を塞ぐそぶりをしながらジト目でコメントする先輩。  そもそも、猪谷先輩はなんで土器を作ったりしてるんだろう。 「工芸部の部長と顧問の先生に迷惑かけないでよ? 後で謝りにいくの、いつも私なんだからね? うん。よろしい! じゃあ、また夜ね」 「夜ねとは何だ!?」  驚愕するシュウくんの声。  なにか変なこと言ったかな?  電話を切った桐野先輩の澄ました表情を目にしたクラスメイトに思わずビックリして身体が跳ねちゃった。 「剛健の家にお邪魔して晩御飯作ってあげるんだよ。あとは勉強を教えたりとか」 「べ、勉強は……自分が教える」 「え!? 大丈夫だよ。だって、私たち二年生だし」 「姉の学問を教えている自分に不足はない。それより、いくら将来を約束しているとはいえ不健全なことはすべきではない。お二方が俺の師範である以上、師として模範であり続けてくれなくては困る!」 「修二郎君は真面目でカッコいいね。お姉さんに似たのかな?」 「あんなのと一緒にしないでくれ!!」  お姉さんという言葉が出た瞬間にシュウくんがまた絶叫した。  その理由がわかるのは近い未来のお話……。  
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!