第四章【美少女】

2/22
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/207ページ
 ――○――○――○―― 「しゅーじろーーーーーー!!」  自宅にて。  きらきらした変な髪の姉が襲いかかってきた。 「可愛い私の彼氏。愛しい、尊い、マジ婿にしたいーっ!」  げっそりである。  こういうことは勘弁こうむる。  義姉ならばともかく実姉でこれはない。  パジャマのトップスだけを着た姉の姿はいわゆる色仕掛けというものだろうか。  駄目だ。どう頑張っても嫌悪しか感じない。 「ちゅー!」 「笑止!」  姉の唇攻撃に手刀を叩き込む。  むぎゅっという悲鳴をあげつつも攻めの手を緩めない姿には感服する。 「私、可愛いでしょ!? これでも修二郎の為にアイドルになったんだよ? 修二郎はさぁ、テレビに引っ張りだこでみんなからモテモテのお姉ちゃんを彼女にできたら幸せでしょ!?」 「姉者を彼女にした男は、毎日胃潰瘍が止まるまいて」 「学校に私より可愛い女子なんかいないでしょ!? 観念して私の彼氏になりなさい! 悪いようにはしないから。マスコミに注目浴びるだけだから」  それ、最悪。  しかし、学校にいる可愛い女子か。  同じ学年ならば仁神彩月が挙げられるだろうが、如何せんあの女子生徒は性格がキツそうなので興味をそそるというよりも恐怖で身が縮む。  年上ならばやはり桐野氏だろう。  しっかりしていて、優しさと厳しさを上手く使い分けながら俺を導いてくれる素晴らしい女性だ。  ただ、異性というより理想の姉としての印象が強いため、恋愛対象には成り難いだろう。 「桜庭……はっ!?」  ふと、自分の口から紡がれた言葉に戸惑う。  いや、これは違う。  これは前日に彼女と共に料理をしたからであって。  そもそも俺にとって身近な女子と言えば桐野氏と仁神彩月を除けば、桜庭と鳳かざみしかいない。  生物学の壁を除けば御崎美鶴が増えるわけだが、考慮すればややこしくなるので考慮しない。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!