(32)社長と秘書

5/6
前へ
/90ページ
次へ
「江上ホールディングスの江上会長です」 「江上会長??」 我が社は江上ホーディングスの移転した本社ビルを施工中。 予定では竣工は来月の中旬。 「江上会長の長女・江上亜子さんのコトはご存知ですよね」 江上亜子(エガミアコ)23歳。 彼女は俺の元カノ。 亜子とは1年前に終わった。 亜子は俺と別れた後、カナダに語学留学して、最近帰国していたと江上会長から訊いた。 「俺の元カノだ」 「会長曰く、亜子様は社長に未練があるそうですよ」 「はぁ?・・・大体アイツは…男たらしで、俺以外にも男が居たぞ」 別れ時だってあっさりしていた。 「男たらしの女性を本気にさせるなんて…社長も罪な人だ」 「何で、お前と江上会長が繋がっているんだ?」 「移転した本社ビルの施工の請負で、会長と共に何度かお会いしましたから・・・」 「俺と留奈を離婚させて、お前には何のメリットがある? 江上会長が提示した見返りに目が眩んだのか??」 「その通りです」 設楽は迷いなく、言い切った。清々するほどに。 「俺を大物政治家の秘書官にしてくれると」 「設楽お前…政治家になりたいのか?」 「俺は『桐生建設』一生勤める気は有りません」 「…そうだったのか…お前が政界にね・・・」
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

947人が本棚に入れています
本棚に追加