954人が本棚に入れています
本棚に追加
「これが、桐生社長のお望みの品です」
「サンキュー。栗原」
「どうぞ」
設楽が栗原にコーヒーを出した。
「こんな小さなモノで聞えるのか?」
「白石邸はトーマ社長のお隣の邸宅ですから・・・大丈夫だと思います」
俺は袋から取り出し、可愛い花の形をしたブローチ型の盗聴器を手に取って眺める。これなら、留奈も盗聴器だと気づかない。
「栗原お前、今日は休みなのか?」
「はい。今日は下の子が熱を出して、病院に連れて行くと嘘付いて、有休を頂きました」
「ふうん。トーマと美古ちゃんは上手くいってるのか?」
「おかげさまで…美古夫人も前向きに不妊治療に取り組んでいます」
「不妊治療か…俺もデキなければ、やらなきゃいけないかな?」
「お互い若いし、直ぐにデキると思いますよ」
「そうか・・・」
設楽はソファに座る俺の背後で控える。
「お目当てのモノも手に入ったし、ありがとう。栗原。ところで、お前と設楽は仲直りしたのか?」
「設楽の悪い冗談には驚きましたけど・・・別に怒ってない。安心しろ、巽」
栗原は設楽に微笑みかけた。
最初のコメントを投稿しよう!