(30)砂時計

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「これが、桐生社長のお望みの品です」 「サンキュー。栗原」 「どうぞ」 設楽が栗原にコーヒーを出した。 「こんな小さなモノで聞えるのか?」 「白石邸はトーマ社長のお隣の邸宅ですから・・・大丈夫だと思います」 俺は袋から取り出し、可愛い花の形をしたブローチ型の盗聴器を手に取って眺める。これなら、留奈も盗聴器だと気づかない。 「栗原お前、今日は休みなのか?」 「はい。今日は下の子が熱を出して、病院に連れて行くと嘘付いて、有休を頂きました」 「ふうん。トーマと美古ちゃんは上手くいってるのか?」 「おかげさまで…美古夫人も前向きに不妊治療に取り組んでいます」 「不妊治療か…俺もデキなければ、やらなきゃいけないかな?」 「お互い若いし、直ぐにデキると思いますよ」 「そうか・・・」 設楽はソファに座る俺の背後で控える。 「お目当てのモノも手に入ったし、ありがとう。栗原。ところで、お前と設楽は仲直りしたのか?」 「設楽の悪い冗談には驚きましたけど・・・別に怒ってない。安心しろ、巽」 栗原は設楽に微笑みかけた。
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