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 ストーリーはこの先いったいどうなり、どんなラストを迎えるのだろう。 「チョコレイト、か」  言葉が白い息になる。  雪でも降り出しそうな寒さと漆黒の澄んだ冬の空が、その瞬間、正体不明の昂揚を呼んだ。  この話をどんなラストにしたいのかと問われれば、それは考えるまでもなくハッピーエンドだ。  そして読者もそれを望むに違いない。  これまでのすべてを忘れて、これからのことも何も考えずに、ドラマを作るべく走ってみようか。  勝算などもとよりないのだ。  甘くて苦いチョコレイトのように、完成形になるために、これからを二人でいるために、俺たちは一度壊れなければならなかった。  それゆえの別れであり六年間だったのだと思いたい。  すっかり俺は直子の書いた物語の主人公になりきっていた。  すぐさまタクシーを止める。  行き先は自宅。  まずは家に帰り、ドラマに必要なアイテムを手にしなければならない。  結婚指輪と一緒に返された、引き出しにしまってある六年前の婚約指輪だ。  今の梓の薬指に輝くダイヤモンドには遠く及ばない小さな石だがもはや仕方がない。  それを手にしたら、次はヒロイン奪還だ。  目指すは今日はじめて訪れた恋敵の家。  あのぼろアパートが決戦場とは演出的に残念だが、俺も人のことは言えない住まいだ。  決め台詞はなんと言おうか。 「愛しているとか叫べばいいかな」  そんな自分に苦笑が漏れる。  大切なことは俺が今までの俺ではないということだ。  好きな気持ちには、今も昔もなんら変わりはないのだから。
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