第30話(最終話) 雨が降ろうが槍が降ろうが  

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 あと8分。選手たちはもちろん、応援席の誰もがまだ諦めていない。  あ! と思ったときには、8番の岡島くんが弾き飛ばされていた。相手チームの大きい人と接触してしまったものだった。  相手にも焦りが見える。ファウルを取られたのは、相手チームの方だった。  フリースロー2本が我が校に与えられる。会場がシーンとなった。岡島くんは1度深呼吸をして、1本目を投げた。応援席のみんなが、祈りのポーズでゴールが決まるのを願っている。  1本目が成功すると、また割れそうな歓声が会場を包んだ。会場の空気は、思いがけない番狂わせが見られるかもしれない期待感で、完全に我が校に傾いている。  岡島くんはボールを抱えたまま少し頭を下げて、呪文みたいに何かをブツブツ言っていた。そしてキッと顔を上げ、2本目を放った。  やった~! 点差が縮まった。6点差だ。  延長戦を戦う余力は残っていないだろうから、あと7点取って勝たなければ。  Y高選手たちにも疲れが見えてきていた。勢いは我が校にある。相手のシュートが決まらず、リバウンドで跳ねたボールが、相手チームの選手の手に触れてコート外に出た。  翔太郎からジンくんへ。速攻。決まったあと、ジンくんがコート上に転がる。ユウくんが起こして、肩をポンポン、と叩いた。
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