第1話  急がば回れ

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 …って、あれ?   あたし、寝てた?  走ったから、確かに疲れていたけど。 「ちょっと、鈴、起きなさいよ」 「え? あかね?」  中学のとき同じクラスだった田代あかねの声が頭の上でした。  ん? あたし、高校に来たんだよね?  ここは、中学?  一瞬、わからなくなった。 「鈴ってば、す~ずちゃん」 「あれれ? 何で、あかねがいるの?」  確かあかねは試験に落ちたはず。 「あたしは補欠合格したの。失礼しちゃうわね」  あかねが耳元で囁いた。 「それにしてもびっくりしたよ、入学式終わって教室来たら、鈴が寝てるんだもん」 「同じクラス?」  あたしの胸に安堵が広がった。 「嬉しい?」  屈託ない友の顔が目の前にある。 「チョー嬉しい!」  あたしはあかねに飛びつきたいくらい嬉しかった。    あたしは、自分で言うのも何だけど、あまり人の輪に入っていけないタイプだ。  正直、入学式に遅刻してくるようなあたしに友だちが出来るだろうか、と内心不安だった。  心配が一気に解消され、あたしはバッチリ目が覚めた。  神様に感謝したい気持ちだった。  …のだけれど。
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