第1話  急がば回れ

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「おい、みんな席につけ」  教室に入って来た担任は若かった。  まだ二十代だろう。  残念なイケメンって感じで、少し怖そうな顔をしている。 「福田 鈴、立て」  …って、何、いきなり。  少しどころか、結構怖い顔。  あたしは、自分の名前がなぜ、いの一番に呼ばれたか理解した。  あ~あ、やっぱ入学式に遅刻はないよな、と諦めた。  はいはい、立ちますよ。 「何で遅れた」  サスペンスドラマで、犯人に凄む刑事のような声色で、担任教師が言った。  正直に話すのは面倒くさい。家の事情を初日からさらすのも御免だった。  あかねが同じクラスだと知ったいま、ハブることを心配する必要もない。  あたしは開き直ることにした。 「すみません、寝坊しました」  と、方便の嘘を言った。  いまさらバカ正直に本当のことを言っても仕方ないのだ。  適当な理由を言ってその場を流してもらおう、と思った。  その方が利口だろう。  後ろから、クスクスと笑う声が聞こえてくる。  ま、いいや。別に好きな男子がいるわけじゃなし。  開き直りから投げやりへ、一瞬のうちにシフトする。 「立ってろ」 「はい」
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