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「おい、福田 鈴」
油断大敵。いきなり担任に名を呼ばれた。
「は?」
「おまえ、中学のときヤンキーか?」
「は?」
ヤバい…。教室がシーンとなった。
「ま、さか」
「すげえ、怖い目つきだな。気をつけろ。おまえ、先生の話何も聞いてなかっただろ」
「え?」
「先生の名前は? 二回くらい言ったぞ。俺は何ていう名前だ?」
「……、すみません」
「中川 伸太郎、体育教師。二十七歳。何でおまえに自己紹介しなきゃなんないんだ?」
「すみません」
残念なイケメン教師こそ中学のときヤンキーだったんじゃなかろうか。
結構、凄みがあった。
「前向いてろ」
「…はい」
チキショ―、チキショ―チキショ―チキショ―チキショ―。
隣のイケメンが笑うから、あたしが怒られたんじゃないの!
ぜったいムカつく隣の男子。
あたしの心の声は隣の男子に対する文句の連発だった。
「全員、起立」
中川先生のこのひと言で、あたしは自分ひとりだけが立たされている状況からやっと解放された。
「今日はこれで解散」
あたしはホッと胸を撫で下ろした。
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