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「じゃあ、福田」
「はい?」
「号令かけろ」
あたし? ですか。
早く帰りたいので、
「礼!」
と勢いよく言った。皆が先生にお辞儀をする。
「おーい、寄り道すんなよ」
椅子を動かす音に混じって、結構口うるさそうだ、などと後ろの方で囁き声が聞こえた。
あかねが寄って来る。
「ねえ、鈴、どうしたの。すっかり目立っちゃったよ」
「どうもこうもないよ」
投げやりに言うと、
「遅刻の原因、寝坊じゃないよね」
と、さすがわかっていらっしゃる。
「あ、わかる?」
「わかるよ。しっかり者のお姉ちゃんが入学式の日に寝坊するわけないもん」
「蘭がさあ、暴れたんだよ」
妹は逃げ回っていたけれど別に暴れていたわけではない。
姉の特権であたしは少々大袈裟に言った。
「え? 蘭ちゃん、今日、小学校の入学式だよね」
「だからさ、お母さんが職場から真っ直ぐ入学式に行くんだからねって、何度言っても聞かないの。挙句にせっかく着せたワンピース脱いじゃって逃げるし」
「それで遅れたの?」
「それだけじゃないよ」
かくかくしかじか。
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