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「ねえねえ、田宮くんってカッコいいよね」
「田宮くん?」
「ほら、鈴の隣の」
「あかね、あんた、もう名前チェックしたの? 早!」
あかねが得意気に話す。
「田宮翔太郎。もとから知ってた。彼、三中で有名だったんだよ。バスケ部のキャプテンでさ」
「バスケ部のキャプテン? ああ、そりゃモテるだろうね」
「あたし、三中に友だちいたから話聞いてたんだ。確か、最寄り駅うちらと同じはずだよ」
「K駅?」
「そうそう、北口出て、うちらとは反対側。学区がギリギリで三中になったらしいけど、もうちょっとずれてたら、うちらと同じ二中だったかもしれないって、その友だちがよく言ってた」
「ずいぶん詳しいじゃないの」
「だって、やっぱカッコいい男子はチェックしとかなきゃ」
あたしは、浮かれているあかねを呆れて見た。
「あ、そうですか」
どんなにあかねが浮かれても、あたしは田宮とかいうやつにはまったく興味がなかった。
むしろ、さっき笑われたことで腹の中が相当煮えくり返っていた。
あたしだって、好きで遅刻したわけじゃないのに、笑うなんて失礼極まりないわ、とあたしは怒っていたのだ。
おまけに、あれは相当女の子たちからチヤホヤされてんぞ、と思うと蕁麻疹が出そうだった。
ムカつく男!
…だったのだ。初対面のときは。
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