第1話  急がば回れ

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「ねえねえ、田宮くんってカッコいいよね」 「田宮くん?」 「ほら、鈴の隣の」 「あかね、あんた、もう名前チェックしたの? 早!」  あかねが得意気に話す。 「田宮翔太郎。もとから知ってた。彼、三中で有名だったんだよ。バスケ部のキャプテンでさ」 「バスケ部のキャプテン? ああ、そりゃモテるだろうね」 「あたし、三中に友だちいたから話聞いてたんだ。確か、最寄り駅うちらと同じはずだよ」 「K駅?」 「そうそう、北口出て、うちらとは反対側。学区がギリギリで三中になったらしいけど、もうちょっとずれてたら、うちらと同じ二中だったかもしれないって、その友だちがよく言ってた」 「ずいぶん詳しいじゃないの」 「だって、やっぱカッコいい男子はチェックしとかなきゃ」  あたしは、浮かれているあかねを呆れて見た。 「あ、そうですか」  どんなにあかねが浮かれても、あたしは田宮とかいうやつにはまったく興味がなかった。  むしろ、さっき笑われたことで腹の中が相当煮えくり返っていた。  あたしだって、好きで遅刻したわけじゃないのに、笑うなんて失礼極まりないわ、とあたしは怒っていたのだ。  おまけに、あれは相当女の子たちからチヤホヤされてんぞ、と思うと蕁麻疹が出そうだった。  ムカつく男!  …だったのだ。初対面のときは。
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