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あいつに寄ってくる女の子たちがフラれるのを見て、平気でいられるほど、それが当然って思えるほど、あたしは神経図太くない。
かといって、あいつを他の女の子に取られるとか、そういうことは考えたくもない。
翔太郎と目が合った。
あいつは困った顔をしている。
あたしは踵(きびす)を返した。
どうしてだろう。あの子が一生懸命、翔太郎のために料理を作ったから?
わからない。
急ぎ足で家の方向に歩く。
「おい、鈴」
翔太郎が呼ぶ声がしたので、あたしは走り出した。
どうして、翔太郎の彼女はあたしなのに、あたしが逃げなきゃいけないの?
でも、どうしたらいいのかあたしにはわからない。
「待てよ、鈴」
あたしは人の波を縫うように走った。
翔太郎の家とは反対方向。あたしの家の方角へ。
同じ駅を利用しているのに、正反対の場所にある家へ。
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