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そうだった。この人はいい子のあたしなんか求めてはいない。
あかねが前に言っていたっけ。田宮くんにはMっ気があるから、ちょっとSな性格のあたしの方が好きだから、と。
「ん? どうした、鈴。言ってくれよ、腹ん中のこと」
「翔太郎…」
あたしはあたしの腹の中を探った。いや、探らなくても、あたしの中にははじめからひとつしかない。
あたしの腹の中のこと、あたしの本心は…。いざ言葉にしようとすると、胸の奥がぎゅーっと押されるように熱くなった。
あたしの心の中ぜんぶを吸い込んでしまいそうな翔太郎のまなざし。その目の中に、あたしが写っている。
「翔太郎は…」
「ん?」
意を決して言う。
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