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中川先生の言葉通り、華麗なるフットワーク? とでも表現すればいいのだろうか、翔太郎の手に負えるような相手ではないことが、素人のあたしにもわかった。
ボールが床に跳ねる音と、2人の靴が体育館の床にキュ、キュ、と擦れる音、真剣な息づかいが静まり返っていた体育館に生気を取り戻させたかのように響く。
翔太郎は何度も何度も先生にシュートを決められた。
それでも5本に1本は先生からボールを奪った。
「よーし。これくらいにしよう。おまえに取られるようじゃ、俺も身体が鈍ったな」
何分経ったのか、あたしにはさっぱりわからなかったが、2人ともハアハア肩で息をしていた。
「どうだ、少しはスッキリしたか?」
「ありがとうございます」
と、翔太郎が頭を下げた。
どことなく吹っ切れた顔になっている。
やはりこいつは、ボールがないと駄目なんだ、と思った。
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