第1話  急がば回れ

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 そもそもどうして遅刻になったかというと…。  妹の蘭が、ぐずったのだ。  今日は蘭の小学校入学式でもある。  ママは仕事を途中で抜け出して入学式に駆け付ける予定になっていた。  あたしはママの代わりに、近くに住んでいる志穂叔母さんに蘭を預け、すぐに高校に向かう予定だった。  蘭がぐずらなければ。 「ママは蘭の入学式に来てくれるって言ったのに」  と蘭は叫んだ。 「だから~、叔母さんが蘭を学校に連れてって、ママは仕事場から直接行く予定だって、昨日から言ってるでしょ」 「そう言って、ママはまた蘭に嘘つくんじゃないの? こないだみたいに」  そう、こないだは蘭を遊園地に連れて行くといって、急な仕事が入ってママは約束を破った。  蘭はまた、ママが約束を破るのではないか、と思っているのだ。 「そんなことないって。こないだはたまたま仕事が入っただけ。今日は絶対来てくれるって、何度も言ってたでしょ」  散々蘭をなだめたのに、蘭は一向に信じようとしなかった。  泣きわめき、せっかく着せた入学式用のワンピースを勝手に脱ぎ出す始末。  もう一回着せようとしても逃げ回り、なかなか着させてくれない。  
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