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小学5年になった弟の辰也は始業式で時間が違う。
あたしと蘭は犬の追いかけっこみたいに部屋中をぐるぐる追いかけっこ。
小さくてすばしっこい蘭に、あたしは振り回され、息が上がった。
「ちょっといい加減にしてよ、蘭。お姉ちゃんも今日高校の入学式なの。ママは蘭の入学式に行くから、お姉ちゃんの学校には来ないのよ」
蘭だってもう一年生になるのだから、姉の私が同じ日に高校の入学式を迎えることを理解しているはずなのに。
「お姉ちゃんは小学校の入学式、パパもママも来てくれたじゃないの。ずるい。お姉ちゃんだけ」
下着姿のまま泣きながら走り回る妹を、あたしはどうすることもできなかった。
この子の言っていることはよくわかる。でも…。
しょうがないじゃない、その頃はパパとママは離婚してなかったんだから。
そんなことを言っても蘭には通用しそうになかった。
六歳の蘭にも両親の離婚のことを少しは理解できるだろう。
けれども、蘭の感情が果たして爆発せずにいられるかは未知数だ。
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