第29話  念力岩をも透す

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 ボールに対する執念がより強い方が勝つのだと思っても、壁みたいな人たちの集団に阻まれると、努力だけではどうしようもないものが存在するということを思い知らされる。  それでも、勝ちたいと願う心はちょっとやそっとじゃ挫けない。  第2クォーター終了。  28対21で、まだ負けている。けれど、7点の差で我が校が食らいついていることに会場の方が驚いている。  10分間のハーフタイム。  選手たちが控室へと消えると、前のあかねが、あたしを振り向いた。 「どうしよう、鈴。あたし、ドキドキして倒れそう」  と、泣きそうな顔になっている。 「あたしらのドキドキなんて、たかが知れてるよ。だって、下の彼らの方がもっとドキドキしてる。しっかりしなよ、あかね。ジンくん頑張っているんだから」 「うん、そうだね」  あたしは持ち場を離れ、あかねの横に並んだ。そして、選手たちの再登場を待っているコートを見下ろす。  係になった高校の生徒が、モップを使って、選手たちから滴った汗を拭いている。  体育館の床は、選手たちが走り回っていた熱をまだ存分に残したまま、後半戦の開始を待っている。
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