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思えば、家が反対方向にあるとはいえ同じ駅の同じ改札を利用しているのだから、もしかしたら小さい頃から駅で行き合っていたかもしれない。中学の頃も。ただお互いを知らなかっただけで、何度もすれ違っていた可能性もある。
何度かの偶然がいつしか、必然への道へと繋がるレールに乗っかって、あたしたちは出会ったのだとしたら、この試合の勝敗も必然なのだろうか。
ふと、そんなことを考える。
どうして試合の終盤、そんなことをぼんやり考えてしまったのか、あたしにもよくわからない。
あたしは自分の頬をパチン、と自分の手のひらで叩いて気合を入れた。
翔太郎は多分いま、極限状態に近くなっている。あの、シンリンオオカミみたいな目つきになって、絡まりそうな足を必死に踏ん張って、ボールを操っている。
ユウくんの3ポイントシュートが決まって8点差になったとき、会場に割れんばかりの歓声が轟いた。
第4クォーター開始直後だった。
今年も勝ち上がるのは当然Y高かN学園。我が校の生徒以外の、ギャラリーのほとんどがそう思っていたに違いない。伏兵としか見られていない我が校の健闘は、きっと誰も予想していなかっただろう。
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