第30話(最終話) 雨が降ろうが槍が降ろうが  

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 あと3点取れば勝てる! けれどもボールはコートの右から左を何往復かして、どちらのチームのゴールにも嫌われたみたいに得点できず、得点ボードは膠着状態。  時間がない。あと1分。  ジンくんの忍術みたいな戦法に翔太郎も加わる。うわっ、これ、何? あたしの彼氏は忍者でもあったのか。後ろに目もあるし。  相手は少しでも点差を広げたくてシュートを打ってきた。でも、相当焦っているのか決まらない。相手も我が校の選手も、リバウンドしたボールに食いつく。  バレーボールか! まるでバレーボールのアタックみたいなスピードでボールが床に弾かれ、翔太郎がレシーブか!って突っ込みたくなるような勢いでボールに飛び込んだ。  大丈夫、大丈夫、とあたしは胸の中で繰り返した。彼の性格は、満足したことに対してはあっさりしているけれど、そうじゃないところは結構執念深いし、諦めが悪い。  ラグビーみたいにボールを取った翔太郎は、渾身の力を込めて立ち上がった。  もう、時間がない。  翔太郎は、ディフェンスについた壁のような相手から素早く一歩下がり、少し体勢を崩しながらもボールを放った。
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