誇りをもって 旗をたてよ

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 薄暗い闇のなかに、明かりとりのたて穴から差しこむ光がもれる。  この湿っぽく、薄暗い世界がトールン王国のすべてだった。  オニールは、トールン王国に生まれた。  長老たちは「我々は、昔はひろい外の世界にいたのだ」と話していた。  だが、オニールには、ひろい外の世界がわからなかった。  生まれたときから、地下に掘られた横穴のつづく、この湿っぽく薄暗い世界しか見たことがなかったからだ。  ただ、オニールは、明かりとりのたて穴のむこうに見える、青いどこまでも続くものが好きだった。  オニールはあきもせずに、青のどこまでも続くものを見つづけた。  長老のひとりが、それが「空」というものだと教えてくれた。  ときどき、その青をよこぎり隠してしまう白いものは、「雲」というのだとも教えてくれた。  トールン王国も、昔はその「空」のしたで栄えていたというのだ。  「空」は、ひろくどこまでも続き「雲」は、形をかえ、色をかえ、とても美しかったという。  戦争に負けたトールン王国の人々は、地下の洞窟に逃げこんだ。  敵の王国は、洞窟のなかまでは追ってこなかった。  ただ、洞窟からでたものは、容赦なく斬り殺した。  まるで、雑草を刈りとるように。  だから、オニールたちトールン王国の人々は「空」の下にでることができず、ずっと、この湿っぽく、薄暗い世界で生きてきたのだ。
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