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サイネイストは冷や汗を流す。
ごまかしを許されないのは自分の方だった。
「…現在父は難しい立場なのです。ですが国民の身の安全、生活を守るために、結界の修復が最優先であると判断し、まだなんの役目もない、身軽な私に、この役を与えたのです…アルシュファイドの彩石判定師を必ず連れて帰るようにと」
アークはこのひと月、サールーン王国の…そして東西セルズの内情を探らせていた。
ミナたちを派遣する以上、最低限の備えだ。
その結果、今、サイネイストの言った通り、国王は微妙な立場であることが判っている。
重臣たちに退位を、代わりに立つ王を選ぶよう、迫られていた。
第一王女か、第一王子か。
そのように不安定な国にミナたちは送れない…それがアークとユラ-カグナの考えだ。
「威信の回復にもなりますね」
その言葉にサイネイストは頬に朱をのぼらせた。
「それは…、私は確かに、そう考えましたが、信じていただきたい。父は、真実国民のために、こちらの彩石判定師が必要であると考えているのです」
アークは組んだ指を動かさない。
「わたくしにとって、彩石判定師は大事な国民のひとりなのです。身の安全が第一だとご理解いただきたい」
サイネイストは身を乗り出した。
「危険などありません!王宮にこちらの彩石判定師を近付けはしません、私が責任を持って…」
アークは首を横に振った。
なんの力もない第五王子では、いざというときミナたちを守れない。
「今日はお疲れになったでしょう。貴賓室を用意します…我らが城でお休みください」
アークは鈴令(りんれい)…小間使いを呼ぶための鈴を鳴らした。
独特の音が響き、隣室から年配の小間使いが現れ、用を聞くと、また隣室に戻った。
「案内させます。シィン」
アークは脇に控えたシィンに呼び掛け、言った。
「客人に案内を…サイネイスト様、後ほどお茶をご一緒しましょう」
にこり、と少女特有のあどけない顔で笑いかけられ、サイネイストは二の句が継げなくなった。
そうして、シィンに促されるまま、城中の案内についていった。
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