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謁見
ミナ乗船の知らせを受け、ようやくアークは肩の力を抜いた。
ミナの体調不良により続いた、一行の帰国の延期…。
「大丈夫か」
ファイナに声を掛けられ、もうだめ、やってらんない、と答えた。
「だから言ったのに!もうっ、もう…どうしてくれよう」
ファイナは笑いながら、するりと言った。
「これを機に自分の行いを反省するように。無茶は何もミナの専売じゃあない」
「全くだ」
アルもそう言い、アークは私が何したって言うのよ!と叫んだ。
「無自覚だよミナと同じだよ…」
アルの言葉にファイナが緩く笑う。
ユラ-カグナがかなり負担を軽減してくれているものの、王の仕事は少なくないのに、国内外の派遣者の、家に残る家族などの急報の対処まで請け負おうとしたり、あれこれと思い付いては気を配り、便宜を図る。
今回のミナが見付けたサールーン王国の赤火石の件でも、ユラ-カグナとシィンとあれこれ算段しているのを知っている。
悔しいのは自分たちも相当な仕事量を抱えていて、手伝えないことだ。
次々と問題を提示してくるミナを止めたい気持ちもあるが、彼女の配慮も解る。
知ってしまった以上、報告するのが最善との判断なのだ。
他に山ほど、黙っていることがあるに違いない。
だからこそ限界まで働いているのだろう。
止めては、アークの不利、不利益、状況判断の甘さを招く。
「取り敢えず船で迎えに行くのを思い止まってくれてよかった。ミナが必要以上に畏縮する。ただでさえ気の休まらない仕事をしてきたんだ、労いこそすれ、責めるべきじゃない」
アークが、うー、と唸る。
その仕草が可愛らしくてファイナは、つい笑ってしまう。
「心配されるのを分かっていて、それでも押し通したのはアークが理解してくれると思ったからだろう。期待を裏切るな」
「ファイナはミナの味方なのねっ」
「無論アークの味方だ、だから言ってる」
そう言うと、きれいにまとめた頭をかきむしろうとする。
ファイナはそれを、アークの頭に手を乗せることで止めて、そのまま、ぽんぽんと叩いた。
「俺たちになら、いくらでも吐き出していいから。ミナには優しくしてやれ。距離を置かれたくないだろう」
後ろでアルが俺たちかよ…と呟いていたが無視する。
次第に落ち着いたのか、赤い顔をしたアークが、ありがと、と呟いた。
そこへ、今日、昼、1人目の謁見希望者が入る知らせがあり、アルが長椅子から立ち上がった。
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