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今日はふたりがアークの側に付く。
側に付くのに特に決め事はなく、彩石騎士のうち、空いている者が付く。
シィンは今はユラ-カグナのもとで、赤火石の件について最終検討中だ。
扉が開き、その謁見希望者が現れた。
灰色の髪に赤砂の交じる、薄緑の瞳の男だ。
彼は深いお辞儀をして、述べた。
「アルシュファイド王国政王陛下におかれましては、ご機嫌麗しくあらせられましょうか。わたくし、セルズ王国中央政府結界管理部のギルドメア・スキルと申します。本日は、アルシュファイド王国国格彩石判定師、ミナ・ハイデル殿の件でお願いがあり、参った次第」
まっすぐアークを見つめる目には淡々とした光しかない。
「…願いとは何でしょうか?」
「ミナ・ハイデル殿を我ら結界管理部の元へお送り願いたい。東セルズでも、西セルズでもない、中央政府である我々に」
その存在はアークも知っている。
だが名前だけの存在で活動実態はないとのことだった。
だがどこよりも早くミナの名を知っている。
アークは小さく眉をひそめた。
「…その者がどのような者かご存じなのですか?」
ギルドメアは頷いた。
「私の理解に間違いがなければ、その方は結界の不具合を感知し、正しい形に整えられる」
その認識は正しい。
正しいがしかしどこからの情報か…。
「いかがでしょうか」
「…あの者に何をさせる気です?」
アークは組んだ指を立てた。
ギルドメアは依然まっすぐな目でアークを見て言った。
「無論、結界の修復を」
アークは視線を伏せ、そして上げた。
まっすぐギルドメアの目を見返す。
「どこのです?」
ギルドメアの瞳が初めて揺らいだ。
少しの沈黙のあと、ギルドメアは言った。
「無論、セルズ全土を」
「最初は?」
今度こそ言葉に詰まったが、ギルドメアは持ち直した。
「ペルトワイゼからです」
西セルズの町のひとつだ。
「何故そこから?」
「東セルズの一部はカザフィスの結界の影響を受けて、灰が降らなくなったからです」
アークは組んだ指を口元へやり、それから下ろして、質問を続けた。
「その後は?」
「クランにしようかと」
こちらは東セルズの町だ。
「…交互にすると?移動に時間がかかりますね…」
ミナの体力が心配だ。
「時間がかかってでも修復していただきたい」
「そんな心配はしていません。その者の身の心配をしています」
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