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やがてグレンが口を開いた。
「中央政府にはつてがなく、行ってなかったんだが…シャクセヌ卿から?」
「いえ、単なる噂で、ヴァッサリカの者が動いていると…あなたでしたか…」
「なんと、噂だけで動かれたのか?」
グレンが驚いて聞き、ギルドメアは答えた。
「噂でもなんでもすがりたかったのです。なので自力で調べました」
「それで…ここへは彩石判定師殿に会いに?」
「いえ…政王陛下に派遣のお願いをしに」
「それで…失敗したと?」
「はい…」
ギルドメアは再び情けなく思う。
グレンの方はそんなギルドメアには一切構わず、聞いてきた。
「なぜ、断られたのか?」
「はあ…、東西いがみ合っているうちは我が国は危険地帯であると…」
それを聞いてグレンは眉根を寄せた。
「失礼ながら、東西宮廷に話を通されなかったのか?」
ギルドメアは体を小さくした。
「訪ねはしたが、東は自分が先だと言っており、西は聞く耳を持たないと…」
「そんな状態でどの様に彩石判定師殿に仕事をさせるつもりだったのだ?」
「むろん…結界管理者には話を通してあるから…、宮廷は通さぬ方がよいかと」
グレンは暫く沈黙し、そして言った。
「綱渡りだな…」
「政王陛下にもそう言われた…」
「しかし管理者には全員に話をつけてあるのだな?」
「え?ああ…そうですが」
「よし、来なさい」
そう言って伝票を取り、会計を済ませる。
ギルドメアは自分も払うと言いそびれたままグレンの後を追い、店を出た。
「何をする気ですっ?」
「政王陛下と交渉する」
足早に歩くグレンは、まっすぐ前を見つめ、揺らがない。
仕方なしに後を追い、再び王城へ。
受付でグレンが名を告げ、来訪の用件を告げると、取り次ぎ室へ行くよう案内された。
「場所は3階上がってすぐ右手の部屋です。お上がりください」
つい数時間前と同じ案内だ。
ギルドメアは先ほどの政王との謁見の結果を思い出し、肩を落とす。
だが、グレンがさっさと中央階段から3階へと上がるので、悩む以前に、ふらふら付いていった。
取り次ぎ室で名と謁見を求める旨伝えると、他の順番待ちをしている者に先んじて、政王執務室に案内された。
部屋に入るとすぐ、政王が立ち上がってグレンに近寄り、親しみを込めた笑みを向ける。
「ご苦労でした、シャスティマの件、ありがとう」
「なんの、本来の目的は果たせずで…申し訳ない」
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