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サールーン土産
数日振りに戻ったレグノリア区ではサリ・ハラ・ユヅリとカヌン・ファラのふたりが待っていた。
北門前広場でスー・ローゼルスタインはファラの頬に手をあてる。
無口な婚約者スーに、ファラは、にこりと笑って、来ちゃいましたと言った。
そんなふたりから極力離れて、サリはルークとカィンにおかえりなさいと言った。
「僕には誰も来てないよ…」
ふふふと笑うルークに、きっとシィン様も来たがってますわ!とサリは拳を固めて請け合った。
それってサリは自分の出迎えに来たと思っていいのかなとカィンは悩む。
いつもながら微妙だ…。
「つい数時間前にミナたちが戻ったんです。それで対応に追われているのですわ。ヘカテ・リガッタが傷つけられてしまって…あっ、でも全員、怪我などはないそうですわ!」
「そっか、よかった」
ルークがにこりと笑って言った。
きれいなその笑顔に、カィンは複雑な思いを抱えた。
すべてを承知しながら、このひとはどれだけの思いを抑え込んできたのか。
「今はみんな王城?」
「だと思いますわ。あの…わたくしたちも一緒に行ってよろしいでしょうか?」
ルークは、にっこり笑った。
「もちろん」
サリはほっと胸を撫で下ろすとファラを振り返った。
ちょうどスーがファラに額を寄せているところで、サリはすごい勢いで正面に向き直った。
顔が真っ赤だ。
あの程度でこの反応とか、微笑ましいやら先が思いやられるやら…。
思ってカィンは、ん?と首を傾げる。
先ってなんだ。
よく分からない感覚にそっぽを向き、ふたりの世界を構築していたスーとファラに容赦なく声を掛け、急いで王城に向かう。
カザフィス王国から帰ったときも、サールーン王国に旅立ったときも会えずじまいだったので、是非とも会っておきたいのだ。
全員馬車に乗り込んで、王城に向かい、アークに結界補正の報告と確認を済ませると、彩石判定師居室に向かった。
そこではカリ・エネ・ユヅリが、土産の品を選別するミナをやや呆れ顔で眺めていた。
ルークたちを見たミナは、ちょうどよかったと仕分けた土産を次々手渡していく。
カィンはカリ同様、呆れてしまった。
こんなことを考えている余裕などなかったはずだ。
「ありがたいけどね、無理してここまで…」
「全然無理じゃないよっ、空いた時間に観光してる最中だったから…」
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