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政王
アークシエラ・ローグ・レグナは王だ。
世界にただひとつの黒土から成る大陸、そのほぼ中央に位置するアルシュファイド王国。
この国は双王制で、アークシエラ…アークはそのひとり、政王として、およそ半年前の15歳の誕生日に即位した。
政王とは国政に直接関わる王だ。
本来アークは、5年前に即位すべきだったが、政王はそこまで幼い子供には務まらないとして、当時の重臣たちが前政王である彼女の伯母、ネイラシェント・クィン・レグナを引き留めてくれたのだ。
その後、即位したアークは、立派に役目をこなしてきた。
多くは書類仕事だったが、文句を言いつつも的確な判断を下し、自分を煩わせることは少ない。
表で自分のことをガルバルとか大陸中で恐れられている獣に例えるぐらいはかわいいものだ。
生意気で尊大な王…それがユラ-カグナ・ローウェンが彼女に持つ心象だ。
「…そうですか?」
彩石(さいしゃく)判定師ミナ・ハイデルはそう言いながらおかしそうに笑った。
「そのまま、生意気でかわいい王なのでは」
ここは王城の食堂だ。
なぜこんな話をしているのか…まあ成り行きだ。
昼前はカザフィス王国から帰国したミナや、今同じ机に着いている風の宮公デュッセネ・イエヤ…デュッカから、北西隣国カザフィスの有する、大陸ただひとつの火山の結界について詳細を聞いていた。
当然アークもいて、一緒に食堂に来たのだが、今、席はやや離れている。
それとなくデュッカが人波を押して引き離したのだ。
ふたりきりで食事を摂りたかったのだろうが、たまたまマエステオ・ローダーゴード…テオが真後ろに来ていて、ユラ-カグナを巻き込み、4人で机を囲んでいる。
今日の昼食はポロポロ肉の素揚げを甘辛垂れにくぐらせた上に、ポロポロ卵を茹でて、まったりとした玉子垂れを絡めた、刻み玉子をのせたもので、少し食べにくいがおいしい。
ちなみに、ポロポロ肉や卵が苦手、または気分でない者には、別の献立もある。
4人は同じ献立をいただいて料理の話に花を咲かせ、食べ終わると葉茶のひとつ、緑茶をいただいた。
葉茶の多くは遠く離れた大陸西端のサールーン王国から運ばれてきたものだが、この緑茶はアルシュファイド王国の西連峰近くにある高原で栽培されたものだ。
青々とした口当たりが苦手な者もいるのだが、清涼感が素晴らしく心地よい飲み物だ。
「そういえばカザフィスでは葉茶をあまり見掛けなかったように思います」
宿では飲んだが、立ち寄った喫茶店などにはなかった。
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