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それでユラ-カグナは何も言わないのかなとちらりと彼を見る。
ユラ-カグナは素知らぬ顔で残りの茶を飲むと、立ち上がった。
「では頼んだ」
そう言われて、ミナも立ち上がる。
他の席に着く者たちも、もちろんアークと彩石騎士たち…ルゥシィン・ヴィーレンツァリオ、アルペジオ・ルーペン、ファイナ・ウォリスも、仕事を再開するために席を立った。
テオは早々にひとり分かれ、王城書庫管理官室に向かい、ユラ-カグナは宰相執務室、アークとルゥシィン…シィンは政王執務室、ミナとデュッカとアルペジオ…アルと、ファイナは彩石騎士居室に入った。
シィンがアークと政王執務室に入るのは、補佐の役目もあるが、謁見する者に対して、白剱騎士を筆頭とする彩石騎士が王の下に在ると知らしめるためでもある。
白剱騎士と彼が率いる彩石騎士は、政王の後ろ楯だ。
それは政治的なもので、実際の力…圧倒的に大きな異能の力量差を知らしめるためだ。
異能とは、この大陸の人々がそれぞれに持つ、土、風、水、火の能力のことで、その大きさは、直接会えば、同じ属性の者は自分を基準に量ることが出来る。
それによれば、彩石騎士の力がいかに圧倒されるものかが判るのだ。
その彩石騎士ほどの力量を持つ集団が政王の後ろに立つ。
政王は、彩石騎士ですら従えるのだと。
従えることでその力量差がどれ程のものかと実感させるのだ。
人は人の異能の力量を正確には量れないが、自分より強いか弱いかぐらいは判る。
政王たちのそれは、漠然としていながら強大さだけは恐ろしいほど感じさせるのだ。
ミナは彩石判定師だからか、普通の人より、はっきりそれが見える。
人々が感じるように、彩石騎士たちと双王の力量は、人の持てる領域とは思われなかった。
政王の判別は、その力でこそ行われる。
ローグの血筋にあることは王を継ぐ条件ではない。
アークは、アルシュファイド全国民の中で最も大きな力量を持って生まれてきた者のひとりなのだ。
王の条件は、建国の祖が強大な異能の力を以て人々を守り、一国を打ち立てたことに由来する。
それは現在でも続き、だから人々は望んでいるのだ。
他を遥かに凌駕する力量を持つ王を。
そのため、アークは生まれたそのときに政王になることが決まった。
別にそれを辛いと思ったことはない。
当たり前に受け入れていた自分がいる。
王の責務は確かに重いけれど。
アークは自分にやれることと信じて疑ったことはない。
そして歴代の王も、同様に務めをこなしてきたのだ。
名に違いはあっても血統は濃く継がれ、続いてきた。
それが今、アークが座る政王の椅子だった。
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