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祭王
ルシェルト・クィン・レグナも王だ。
アルシュファイド王国双王のひとり、祭王として、5年前に立った。
ルシェルト…ルークの即位は、前祭王崩御の日に行われている。
前祭王はルークの叔父だ。
ルークの母であるネイラシェント…ネイの双子の弟にして。
アークの、父親でもある。
ルーク戴冠の儀式の間で涙を浮かべぬ者はいなかった。
当時の白剱騎士であった父と、当時の宰相と、当時の四の宮公らに見守られ。
幼いアークがシィンに支えられ、泣き声を堪えるなか。
ルークは政王である母の手により、冠を戴いた。
時々。
あの時のことを思って目頭が熱くなる。
祭王戴冠を急いだのには理由がある。
祭王には国の守護者としての務めがあるのだ。
圧倒的大きさを示す力量は政王に求められるのと同じだが。
その質には条件がある。
土の力であることだ。
それは代々受け継がれてきたアルシュファイド王国の絶縁結界を継続するための条件。
政王が国を守る剣だとしたら、祭王は盾なのだ。
人々は政治に剣を振るい、結界を祭り、強固な盾とする双王を望んだ。
役目を辛いと思ったことはない。
ただ優しい叔父の喪失は悲しかったし、アークが可哀想だった。
ずっと幼い頃に母を亡くし、数年後に父までも。
ローグの家はあるが、アークはあれ以来帰ることがない。
王城の方がまだしも人が居るからだ。
それに、父母との思い出が薄い場所だ。
そこにミナが入ってくれて、よかったとルークは思っている。
どこか、うっかりな所が危なっかしいものの、やわらかな空気が癒しになる。
いつか。
…いつか、ローグの家にアークが帰れるように。
父母の思い出に向き直り、悲しみでなく愛しさを取り戻すように。
なればいいなと勝手に期待していた。
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