サールーン王国の使者

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サールーン王国の使者

その知らせが届いたのは、デュッカがグレンからの手紙を持ち込んで直ぐだった。 アークは早く内容を読みたかったが、サールーン王国からは国の名を背負った使者が直接赴いているのだ。 優先させねばなるまい。 「デュッカ、その手紙後でも大丈夫?」 一応聞くと、デュッカはゆったり頷いた。 「問題ない。ユラ-カグナに渡しておく」 そう言って隣室に続く扉の奥に消えた。 部屋を通ってさらに隣室の宰相執務室へ行くのだ。 アークは居住まいを正して使者を入れるよう声をあげた。 入ってきたのは緊張の面持ちの若い男…青年だった。 青い髪に緑の瞳の鮮やかな人物で、右手を左胸にあてて背を傾け、騎士の礼に似た挨拶をした。 「アルシュファイド政王陛下にはご機嫌麗しくあらせられましょうか。本日はお会いいただき大変光栄に存じます。わたくし、サールーン国王第七子にして第五王子のサイネイスト・クー・ルーンと申します」 アークは少し目を見張った。 一国の王子が順番待ちをして謁見するなど。 しかも執務室などで。 「それは…このような場で申し訳ない、お伝えいただければ相応の迎えを出しましたのに」 アークは立ち上がって目でシィンに合図した。 常は部屋の影に置いてある貴賓用の椅子を出し、執務机の前に斜めに置く。 「さあ、どうぞお座りくださいませ。だいぶお待ちになったのでは?」 サイネイストは、どうも勝手がわからず、と言った。 「このような役目は初めてなのです、どうか無礼をお許しください」 「無礼だなどとそんな…こちらこそ気付かず失礼致しました。お気を悪くなさってはおられませんか?」 「いえ、とんでもない、待ち時間にとてもよい茶をいただきました。さすがアルシュファイドは品がある」 シィンは変わらぬ表情ながら、王子と名乗るこの男を眺めた。 ただの迂闊者か、演ずる者か。 再度お座りください、とアークが椅子を示すのに、では失礼しますと緊張を頬にのせた。 「…それで、サールーン国からどの様な用件で来られたのです?」 アークはサイネイストが座るのを見届けて、自分も腰を下ろした。 サイネイストは緊張を取り戻し、背筋を伸ばした。 「実は、そちらの彩石判定師をお貸しいただきたいのです」 「それはまた、急な申し出。何より、彩石判定師がどの様な者かご存知なのですか」
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