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距離はすぐそばで、聞こえているはずなのに、少年はまったくこちらを見ない。まるで聞こえていないかのように。いや、聞こえていなかったのかもしれない。
ぱんぱんぱんぱーん、という連続した汽笛の音が聞こえた。
俊輔は顔を上げた。電車がホームに滑り込んでくる。悲鳴や叫び声が大きくなる。顔をそむける人もいた。
俊輔は、何かに憑かれたように、少年の横顔を見ていた。なぜか分からないが、目を逸らすことができなかった。
少年はややうつむき加減で、金髪が目にかかって表情がよく見えなかった。警笛が鳴っても顔を上げもしない。
音が消えた。その瞬間、すべての音が俊輔の耳から遠ざかった。何も聞こえない。時間が止まったようだった。
不意に金髪の少年が顔を上げ、こちらを見た。俊輔と目が合った。
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