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その顔は、微笑を浮かべていた。取り憑いていた何かが抜け落ちたように爽やかだった。
だが、そんなことより何より――
僕?
その顔は俊輔自身だった。
自分とそっくりな顔がそこにあった。まるで鏡を見ているかのようだった。
黒髪か、金髪か、黒い学生服か、白い学生服か、の違いで、他はすべて同じ。自分と生き写しの双子の兄がいるかのようだった。
俊輔と少年はたっぷり見つめ合っていたように思えたが、実際にその時間は一秒にも満たなかったかもしれない。
ぷあーんという大きな警笛、車体が急制動をかけるギギギギという音、女性の悲鳴、すべての音が戻ってきた。
少年の身体が吸い込まれるように鋼鉄の車体に押しつぶされた。
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