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電車は三十メートルほど進んで止まった。
駅員が走っていく。騒然とする空気で、俊輔はその場に立ちつくしていた。今、目の前で見たものが信じられなかった。何が起こったのか、まだ理解できないでいた。
僕が、いた?
電車に跳ねられる寸前、確かに目が合った。あいつは笑っていた。
何が何だか、分からなかった。
駅員が担架を持って横を走り抜けていく。自然と後を追った。
急ブレーキで、鉄と鉄が摩擦して生じた匂いが立ちこめていた。
車体の下に押しつぶされた少年を助けるため、電車が少しバックした。線路の間、砂利の石が盛り上がった上に、白い服の体がうつ伏せで倒れていた。赤い血が飛び散った身体は、ぴくりとも動かない。
右腕が変な形に曲がっていて、肘からは白い骨が飛び出していた。
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