第一章 招待状

25/67
前へ
/382ページ
次へ
 電車は三十メートルほど進んで止まった。  駅員が走っていく。騒然とする空気で、俊輔はその場に立ちつくしていた。今、目の前で見たものが信じられなかった。何が起こったのか、まだ理解できないでいた。  僕が、いた?  電車に跳ねられる寸前、確かに目が合った。あいつは笑っていた。  何が何だか、分からなかった。  駅員が担架を持って横を走り抜けていく。自然と後を追った。  急ブレーキで、鉄と鉄が摩擦して生じた匂いが立ちこめていた。  車体の下に押しつぶされた少年を助けるため、電車が少しバックした。線路の間、砂利の石が盛り上がった上に、白い服の体がうつ伏せで倒れていた。赤い血が飛び散った身体は、ぴくりとも動かない。  右腕が変な形に曲がっていて、肘からは白い骨が飛び出していた。
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1683人が本棚に入れています
本棚に追加