第一章 招待状

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 俊輔は受け取った漫画をぱらぱらとめくり、ありがとう、とお礼を言って、素早く鞄の中に仕舞った。 「六巻のプレミアム版には設定資料のブックレットが付いてるらしいよ」  うれしそうに語る梅島に、へえ、そうなんだ、と生返事をする。  思った。教室でそんな話をするなよ。みんなの目や耳があるところで、そういうオタクっぽい話をしないでくれよ。仲間だと思われるじゃないか。  梅島とは二年になって同じクラスになった。クラスでアニメや漫画といった趣味を語り合える唯一の仲間だった。  二人とも帰宅部なので、学校から駅まで、よく一緒に歩いて帰った。自然と話すようになり、やがて、漫画や本の貸し借りをするようになった。  というか、梅島が一方的に貸してくる。俊輔は自分の物を人に貸すのが好きではなかった。折られたり、汚されたくなかったからだ。
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