第一章 招待状

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 だが、人のいい梅島は、あれやこれやと貸してくれる。 中にはいずれ買おうと思っていた本もある。今、手にしているこの漫画もそうだ。週末、秋葉原に行って販促用の特典ポストカード付きを買おうと思っていた。  なのに、貸してくれた。そりゃあ読む。ファンだから。単行本が出るまで雑誌連載を読むのを我慢していたやつなんだから。  しかし、読んでしまうと、この週末、秋葉原に行く高揚感が薄まる。目的は、特典ポストカードだけになってしまう。だから、すごく貸してほしいんだけど、貸してほしくない。  梅島はそこまで考えが及ばない。無邪気で素直。善意で貸してくれている。  小太りで、見るからに人がいい。悪い意味で空気が読めない。ちなみに、同じようにずんぐりした体型の妹がいる。 「太田君は今日、秋葉原に行くんだろ? 一緒に行こうよ」
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