第二章 試合開始

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* 鉄の檻  底の見えない暗い穴に俊輔はいた。  頭上にはかすかに地上の光が見える。土の壁をのぼっていく。あえぐような浅い呼吸。指の間からぼろぼろと土がこぼれ落ちていく。息が苦しい。空気が薄い。一メートルも上がったところでずり落ちる。  お尻からしたたかに打つ。穴の底に手をつく。ぬるっと滑る。真っ赤な血だ。何かが手にあたる。拾い上げる。人間の腕だった。肩からもげた腕。指先は何かを掴もうとするように曲がったままだ。 「ひいっ」  叫んで放り投げる。  血の池から顔が半分のぞいている。目がこちらを見ている。赤く染まった金髪。あいつだ。電車に飛び込んで自殺した、あの白ずくめの少年。  やあ、君もここに落ちて来たんだね。歓迎するよ。ずっと一緒だ。君とまた会えてうれしいよ。 「うわああああああああ」  がばっと起き上がった。
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