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そしてなぜか今私はワイン片手に知らない人間の居間にいる。
荒木と会うなり抗いがたい素晴らしい力でもって葉山なる超高級住宅街に連れてこられたのだ。
主は50も半ばのゴリラのような顔をしていたが、奥方が目を引く美人だ。
歳の離れた夫婦に下世話な妄想を抱いた。
「この子、前のバイト先の同僚だったんです。こちらは教師仲間の浅野さん。」
仲間とな?
「えーヤバイ。ユウキチマジで教師だったの?」
奥方が上品な顔に似合わないほど黄色い声を挙げる。
「そうだよ!ほら、この人が証人!」
するとご主人が無言で何度も頷いた。
なるほど、私を連れてきた意図が読めた。
おかしいとは思ったのだ。
あんな顔で凄んでまで引っ張ってきた理由が。
身元証明ってか?
この人過去に何があったのだ。
そんな不純な動機で連れてこられた私は一時間もすると完全に居場所を無くした。
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