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荒木はというと人が作る輪の中を渡り歩いてはあり得ないほど可愛らしい声でお腹を抱えて笑っている。
半口を開け間抜け面を晒しているところに女主人がやってきた。
「えーと、浅野さんて言いましたっけ?」
私は黙ったまま頷く。
「今日はわざわざすみません。祐希がどうしても連れてくるって言い張るから。」
「そんな強引だったんですか?」
「そうなの。まああいつも昔いろいろあったからあまり友達とか作らない質なんだけどね。多分浅野さんのことはよっぽど気に入ったのね。」
結った髪の毛を指で整えながら荒木を目で追っている。
「まあ、とにかく今日は寛いでいってくださいね。あ、申し遅れました。私滝口ミキです。」
最後は強引に握手をして締めるとこれまたとっとと人の渦の中に消えた。
またもやぽつねんと取り残された私はやることもなくいたずらに酒で腹を膨れさせた。
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