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驚いた私が顔を上げると、フロリアが微笑んで私の顎を引き上げる。
そうやって見上げたフロリアの顔は、思った以上に近くにあって……ますます胸の鼓動が早くなる。
「約束してくれる?」
そのまま唇を重ねるフロリア。
ふわりと秋の風が私たちの頬を撫でた。
「んっ……」
少しだけ冷たさをはらんだ空気が、私の頬がほてっていると告げる。
フロリアの優しくて熱きキスに、心臓が飛び出しそうになってるよ、と教えてくれる。
……これじゃあ、私。
キス1つで陥落されちゃったみたいじゃない。
「……無粋な風だね」
そんな内心の動揺を呼んだみたいに、フロリアは微笑んでひらひらと翻るカーテンをちらりと睨んだ。
「う……うん……」
私は、思わずフロリアの顔を押し退けてうつむいた。
「僕はもう2度と女性の誘いに乗らない。だから、君もできる限りでいい。僕のそばにいて幸せをわけて欲しい」
キスだけでもこんなに動揺しちゃうのに、考えるだけで頬が火照っちゃう。
フロリアの側にずっといたら、ドキドキでおかしくなっちゃいそうだよ。
心の中ではわかっていたけど、私は恥ずかしくてどうしても頷くことができなかった。
そんな私を、フロリアは淋しそうな顔で見ていた。
「……いつか、ね」
だけど、私はそういうの精一杯だった――
「やれやれ。この家では、君と2人きりになるなんて望めないようだね」
「仕方ないわよ。ロイやユーゴを追い出すわけにはいかないもの」
なんて会話が、このところ私たちの日課になってる。
「で、今日は、幼馴染まで押しかけてきたってわけか」
そう。今日は、どういうわけか智哉君が遊びに来ていた。
なんでも渡したいものがあるって言ってたんだけど、なんだろう?
「ごめんね。今度お休みには、どっかに遊びにいこうよ」
「ああ、そうだね。ところで、お茶をいれるのはまだかかりそうかい?」
フロリアはそうやって手元の砂時計を覗くふりで、素早く私の頬にキスをしていった。
「ふ、フロリア!」
「ご褒美だと思ってよ。僕は、本当に女の子の誘いに乗ってないだろう?」
「そうだけど……」
それは本当のことだって知ってるけど、でも、やっぱりこんなふうに何気なくキスするのは、照れちゃうよ。
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