第1章

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 驚いた私が顔を上げると、フロリアが微笑んで私の顎を引き上げる。  そうやって見上げたフロリアの顔は、思った以上に近くにあって……ますます胸の鼓動が早くなる。  「約束してくれる?」  そのまま唇を重ねるフロリア。  ふわりと秋の風が私たちの頬を撫でた。  「んっ……」  少しだけ冷たさをはらんだ空気が、私の頬がほてっていると告げる。  フロリアの優しくて熱きキスに、心臓が飛び出しそうになってるよ、と教えてくれる。  ……これじゃあ、私。  キス1つで陥落されちゃったみたいじゃない。  「……無粋な風だね」  そんな内心の動揺を呼んだみたいに、フロリアは微笑んでひらひらと翻るカーテンをちらりと睨んだ。  「う……うん……」  私は、思わずフロリアの顔を押し退けてうつむいた。  「僕はもう2度と女性の誘いに乗らない。だから、君もできる限りでいい。僕のそばにいて幸せをわけて欲しい」  キスだけでもこんなに動揺しちゃうのに、考えるだけで頬が火照っちゃう。  フロリアの側にずっといたら、ドキドキでおかしくなっちゃいそうだよ。  心の中ではわかっていたけど、私は恥ずかしくてどうしても頷くことができなかった。  そんな私を、フロリアは淋しそうな顔で見ていた。  「……いつか、ね」  だけど、私はそういうの精一杯だった――  「やれやれ。この家では、君と2人きりになるなんて望めないようだね」  「仕方ないわよ。ロイやユーゴを追い出すわけにはいかないもの」  なんて会話が、このところ私たちの日課になってる。  「で、今日は、幼馴染まで押しかけてきたってわけか」  そう。今日は、どういうわけか智哉君が遊びに来ていた。  なんでも渡したいものがあるって言ってたんだけど、なんだろう?  「ごめんね。今度お休みには、どっかに遊びにいこうよ」  「ああ、そうだね。ところで、お茶をいれるのはまだかかりそうかい?」  フロリアはそうやって手元の砂時計を覗くふりで、素早く私の頬にキスをしていった。  「ふ、フロリア!」  「ご褒美だと思ってよ。僕は、本当に女の子の誘いに乗ってないだろう?」  「そうだけど……」  それは本当のことだって知ってるけど、でも、やっぱりこんなふうに何気なくキスするのは、照れちゃうよ。
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