第1章

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 「君は、かなたちゃんの彼氏なんだろう? だったら、彼女を守るのは、もう僕の役目じゃない」  「なるほど。これは、透から託されたナイトの称号ってわけか」  「そう思ってもらえると助かるよ。じゃあ、確かに渡したからね」  そう言うと、智哉君は立ち上がった。  「もう帰るの?」  「そんな言い方をすると、僕はあらぬ期待をするよ? いいの?」  「あっ……」  「ふふふ。冗談だよ。また明日、学校でね」  そうやって笑った智哉君は、私の見送りを断って、独りで帰っていった。  「安眠を司る砂時計、か」  「気になるの?」  「いや。昔、魔界にいた頃に、この蔦と蛇が複雑に絡み合う模様を見た気がしてね」  「魔界って言うか、魔術って、わからないものよね。私だったら、蛇なんか枕元に置いてたら、気持ち悪くて寝れないわ」  「ふふふ。女の子だね。でも、魔界はそんなにこっちの世界と変わらないよ。少なくとも、50年前のこっちの世界とはね」  「そうなんだ?」  なんだか信じられない気がするけど……。  「そう言えば、フロリアってどうして魔界を飛び出して、こっちの世界にやってきたの?」  なんとなく不思議に思って聞いてみた。 だけど、フロリアに一瞬、大きく息をのんだ。  どうしたんだろう? って思った時……。  「ただいま~。おやつ、ねーの?」  廊下の向こうから、ロイの声が聞こえてきた。  それに気をとられた間に、フロリアはなんでもない口調で話し始める。  「別に理由なんてないよ。ただ一緒に遊んでいたロイやユーゴが行くって言うから、それも面白いなって思っただけ」  「ふーん。そうなんだ」  って言ったところへ、全員集合。  「んっ? 俺とユーゴがどうしたって?」  早速ロイが聞いてきた。  「あら? 聞こえてたの? フロリアが人間の世界に来たのは、遊び仲間のロイたちが行くって言ったからって話をしてたのよ」  「へっ?」  「遊んだのは1回だけだ」  「えっ?」  どういうことって思ったら、フロリアはちょっと顔をしかめていた。  「確かに、彼らとは人間界に行く直前に出会ったんだけどね。僕は、なんせ街から遠く離れた場所に住んでいたからね」  「だよなー。俺とユーゴは、けっこうガキの頃からつるんでるけどな」  「でも……すぐに仲良くなった」  「仲良くって、フロリアと?」
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