第1章

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 「ま、そんなところかな。街に出てきてすぐ2人と出会って、意気投合して人間界まで来たんだ」  ふーん。魔界から人間界に行くのって、私たちが海外旅行するよりずっと大変だと思うんだけど、そんな簡単に決めちゃえるものなんだ……。  それとも、都会に出てきたついでに、ちょっと遠出って感じだったのかな?  それって……。  「フロリアの一族ってみんなそんな性格なの?」  「そんな性格ってどういう意味?」  「……思いついたら、考える前に即実行」  そこまでは言わないけど……楽しいと思ったらとりあえず試してみるって感じかな?  そう言おうとした時、ふっとフロリアの顔が目に入った。  あれ? なんだか困った顔してる。  「あ、ユーゴ。戸棚におやつの残りがあるから、ロイと一緒に食べてきたら?」  それを見ちゃったから、私は、ユーゴと、それ以上に興味津々って顔をしているロイを、さり気なくキッチンに追いやった。  「さて、僕はこれを部屋に飾りに行くかな」  「うん」  「本当だよ。楽しそうだから、人間界に来たって言うのはね」  「わかってる」  そう答えた私も。  「そう。でも、まだ本当に楽しい思いはしてないな」  そうやって、茶化したフロリアも。  心のどこかで、疑問が残っていることをなんとなく感じていた……。  静かな部屋に響いてる時計の音につられて目をやったら、もう夜中って言ってもいい時間。  ふう。もうこんな時間。早く寝なきゃね。  最後に、明日の準備ができてることを確かめて、さあ、ベッドに行こう。  コンコン  あれ? こんな時間に?  「誰?」  「部屋に入れてくれるかな?」  「ふ、フロリア!?」  ど、どうして、フロリアが?  夜中に女の子の部屋に来るなんて……いろいろな想像が駆けめぐって、ワタワタしちゃう。  そしたら、ドアの向こうで苦笑いする気配がした。  「一体何を慌てているんだい?」  「えっと、その……こんな時間に何の用?」  「用ってわけじゃないけど、ちょっと君と話しがしたくてね」  「話がしたい?」  ホントにそれだけなのかな? つい疑い深くなってしまう私。  「疑ってるの?」  「だって……」  今までの行いが行いだもの。  「本当だよ。誓って何もしない」  うーん。  「魔物が誓いなんて言うのも変かな? でも、本当に話がしたいだけなんだ」
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