第1章

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 信じても……いいよね?  だって、いざとなったらペンダントもあるし。  「ちょっと待って。今開けるから」  着替えをした時にちょっと乱れちゃった髪を整えてから、ドアを開ける。  「ありがとう、かなた」  するっと音もなく入ってきたフロリアは、居場所がないとでも言うように、突っ立っていた。  「どうしたの?」  私も、どこに座ってと勧めればいいのかわからなくて、立ったままそう言った。  「君に……お願いがあるんだ」  いつになく神妙な顔つきのフロリア。  「……もしよかったら、かなたと一緒に眠ってもいいかな?」  「えっ?」  一緒に眠るって……?  「近頃、どうも悪夢ばかり見て、よく眠れないんだ」  「そう言えば……」  なんだか最近、いつも眠そうにしていた気がする。  「悪夢って、そんなに酷いの?」  「ああ。思い出したくもないよ」  フロリアは本気で嫌そうな顔をしていた。  「本当に眠るだけよ?」  「わかっている。今日は、何を犠牲にしても、かなたと一緒に眠りたいんだ」  本当に酷い悪夢なのね……。  フロリアに浮かない顔を見ていたら、追い出すことなんてできなかった。  「じゃあ、手をつないで寝ようか?」  「純愛っぽくていいね。感謝するよ」  「純愛じゃなくなったら、ペンダントを使うわよ? 覚悟はいい」  冗談っぽく笑っていったら、やっとフロリアも笑顔になった。  「ふふふ。愛し合っていれば、何をしても純愛だって言うけど?」  「…………」  やっとフロリアらしくなってきたのは安心だけど、自分の身がちょっと心配になってきたわ……。  「冗談だよ、君に嫌われたくないからね。もっとも、そんな風にじらされるのもそそられるものだけど」  「もう、フロリアったら!」  「わかってる。誓って、何もしないよ」  「じゃあ、灯りを消すわね」  「おやすみ」  「おやすみ」  そう言いながら、私たちはベッドにもぐりこんだ。  途端に、フロリアが手をつないでくる。  「フロリア?」  チラッと見たら、フロリアはもう目を閉じていた。  寝たふりしてるの? それとも、本当に寝ているの?  気になったけど、フロリアの安心したような寝顔がちょっとかわいかったから、そんなことはすぐにどうでもよくなっちゃう。  「おやすみ。一緒にいい夢が見られるといいね」
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