第1章

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 「う~ん……無理なのかなあ……」  今日の晩ご飯はゴーヤチャンプルー。大皿に盛って皆で取り分けようと思ったんだけど。  その肝心の大皿は、普段は使わないから、戸棚の高いところにしまっていたのよね。  踏み台を使っても手が届かない。えーい!  「もう、ちょっと……」  おもいっきり背伸びをしていたら。  「きゃあ!」  ぐらり  重心がとれなくなって。  倒れる!  ぽすっ  「……あれ?」  背中から、誰かに抱きとめられた。  「かなた、大丈夫?」  抱きすくめられて、長い髪が頬に触れた。……フロリアだわ。  「あ、ありがとう」  なんだかどぎまぎしていると、フロリアが顔を寄せてきた。  「君は、自分が僕たちの面倒をみてると思ってるんだろうけどね」  フロリアの耳についた羽がぱたぱたと揺れるのがわかる。  「逆だよ。僕たちが君の面倒をみてるんだよ」  フロリア、ほんとに綺麗な肌してるんだわ……。  「僕たちが、君に振り回されてるんだ。……かわいい君にね」  唇も、女の子みたいに柔らかそう……って。  「ちょ、ちょっと待ってフロリア!!」  「なに? 僕はただご褒美のキスを……」  「助けてくれたのは嬉しいけどっ!」  「素直にありがとうも言えないの? そんなひねくれた君もかわいいけれど……」  「………………」  フロリアが、おおげさに私から飛びのく。  「さて、僕は夜の散歩にでもでかけようかな」  そんなフロリアを見ていたら、私にちょっとした悪戯心が芽生えた。  「ちょっと待って、フロリア」  「え? なんだい?」  「言ったわよね、あなたたちが私の面倒を見ているって」  「そうだよ。僕は君への恋に魅了された哀れなしもべだからね」  「じゃあ、しもべとしての責任を果たしてもらいましょうか」  「え?」  「どうやら、ゴーヤが足りないみたいなのよね」  「え?」  「おつかい、頼まれてくれるわよ、ね?」  「ロイ、ユーゴ、ごはんよー」  「お! 今日の晩飯は麻婆豆腐か!」  「甘口……だと嬉しい、な」  「……」  「それにしても、ほかにはやけにきゅうりばっかり使ってないか?」  「うん……酢の物にサラダ、和え物きゅうり」  「うわ、マジかよ! 味噌汁にまで入ってるじゃねーか!」  「……」  「まあまあ、いいじゃないの。いただきましょう?」
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