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「おう! お前が作ってくれたんなら俺、なんでも食うぞ?」
「……いただきます」
「ふふ、たくさん食べてね」
「……」
ふう、みんな食べ終わったわね。あとはお茶碗を洗わなきゃ。
「……」
「どうしたの? フロリア」
「片付けるのを手伝わせてくれないかい?」
「え? ……ええ、いいわよ。じゃあ、お皿を拭いてくれる?」
……
…………
………………
「……ありがとう、黙っててくれて」
「なにを?」
「僕がゴーヤと間違えて、きゅうりを買ってきてしまったこと」
「ええ」
そりゃあ、きゅうりを買って帰ってきたフロリアにはびっくりさせられたわ。でも、この子たちにとっては、ゴーヤがどういうものかなんて、知らなくて当然だもの。
『綺麗な緑だし、第一安かったからね』と大量にきゅうりを買ってきたフロリア。
……にこにこした顔を見ていたら、怒るに怒れなくて。
「ロイに知られたら、日ごろのからかっている仕返しをされるところだったよ」
「あら、それは惜しいことをしたわ」
「意地悪だなあ」
「そうよ。知らなかったの?」
「……ふふ」
「なあに?」
「やっぱり君は素敵な女性だよ」
「ふふ。ありがと」
フロリアの甘い言葉には慣れたはずだけど、今は純粋に嬉しかった。
「これで僕の願いを叶えてくれたら、最高の女性なんだけどね」
「願い?」
「うん。一緒に泳ぐという願いをね」
あれ、普段とはちがって健全なお願いじゃないの。
「いいわね、それ」
「ほんとかい!?」
「ロイとユーゴも一緒にプールに行くのも楽しいかもね」
「そうじゃない、プールじゃ駄目なんだ」
「でも海は今の季節じゃあとても泳げないわよ」
「そうじゃなくて。泳ぐのは別のところで」
「え?」
するとフロリアがこっちにすっと寄って来た。
「僕の囁きの海で泳いでみないかい? そして、僕を君の瞳の中でおぼれさせて欲しいな」
……結局はそこなのね……。
「もう、フロリアったら、そうやっていつも女の人を口説いているんでしょ? 駄目よ、そう言うことしちゃ」
「人聞き悪いな、僕はいつだって女性には微笑みだけを与えてきたよ」
「あら、陰で傷ついたひとはたくさんいるかもよ?」
「そうだね、でも……」
「え?」
「本気で傷つけたのは、1人だけ、かな……」
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