第1章

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 「おう! お前が作ってくれたんなら俺、なんでも食うぞ?」  「……いただきます」  「ふふ、たくさん食べてね」  「……」  ふう、みんな食べ終わったわね。あとはお茶碗を洗わなきゃ。  「……」  「どうしたの? フロリア」  「片付けるのを手伝わせてくれないかい?」  「え? ……ええ、いいわよ。じゃあ、お皿を拭いてくれる?」  ……  …………  ………………  「……ありがとう、黙っててくれて」  「なにを?」  「僕がゴーヤと間違えて、きゅうりを買ってきてしまったこと」  「ええ」  そりゃあ、きゅうりを買って帰ってきたフロリアにはびっくりさせられたわ。でも、この子たちにとっては、ゴーヤがどういうものかなんて、知らなくて当然だもの。  『綺麗な緑だし、第一安かったからね』と大量にきゅうりを買ってきたフロリア。  ……にこにこした顔を見ていたら、怒るに怒れなくて。  「ロイに知られたら、日ごろのからかっている仕返しをされるところだったよ」  「あら、それは惜しいことをしたわ」  「意地悪だなあ」  「そうよ。知らなかったの?」  「……ふふ」  「なあに?」  「やっぱり君は素敵な女性だよ」  「ふふ。ありがと」  フロリアの甘い言葉には慣れたはずだけど、今は純粋に嬉しかった。  「これで僕の願いを叶えてくれたら、最高の女性なんだけどね」  「願い?」  「うん。一緒に泳ぐという願いをね」  あれ、普段とはちがって健全なお願いじゃないの。  「いいわね、それ」  「ほんとかい!?」  「ロイとユーゴも一緒にプールに行くのも楽しいかもね」  「そうじゃない、プールじゃ駄目なんだ」  「でも海は今の季節じゃあとても泳げないわよ」  「そうじゃなくて。泳ぐのは別のところで」  「え?」  するとフロリアがこっちにすっと寄って来た。  「僕の囁きの海で泳いでみないかい? そして、僕を君の瞳の中でおぼれさせて欲しいな」  ……結局はそこなのね……。  「もう、フロリアったら、そうやっていつも女の人を口説いているんでしょ? 駄目よ、そう言うことしちゃ」  「人聞き悪いな、僕はいつだって女性には微笑みだけを与えてきたよ」  「あら、陰で傷ついたひとはたくさんいるかもよ?」  「そうだね、でも……」  「え?」  「本気で傷つけたのは、1人だけ、かな……」
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