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その、フロリアの顔が。
ふと、曇ったような気がしたけれど、私はそれ以上立ち入ることができなくて……。
ただ、黙々とお皿を洗い続けた……。
「ねえ、美琴ちゃん、かわいいね、この金魚」
「あんたさあ、これ以上ペットを増やすつもりなの?」
「もう、あの子たちはそんなんじゃないったら」
今日は、美琴ちゃんとウインドウショッピング。……のはずが、露店売りの金魚屋さんなんて、この町では珍しいから。私はさっきから金魚屋さんの前に釘付けになっていた。
「昔からあんたはこういうの好きだよね」
「うん。ペットなんて飼えなかったから……だから金魚なら、なんとかって」
「じゃあ今は夢がかなったんじゃない? かわいいペットが3匹も!」
「美琴ちゃんったら! 怒るわよ!」
「はいはい……あれ、あそこにいるの、あんたのとこの子じゃない?」
「え?」
そう言われて、見てみると。
遠くからでもわかる綺麗な髪……フロリアだわ。それに。
「ひゃー! すごい美人と一緒じゃない?」
同じくらい、綺麗な女の人を連れていた。
「……」
フロリアと女の人は、とても楽しそうで……。
「やるねえ……残り2人、あんたもぐずぐずしているとさらわれちゃうよ?」
「もう、美琴ちゃん! だから、あの子たちとはそんなんじゃないったら!」
強がってみせても、どうしても同様は隠せなくて……。
帰ってからも、私はフロリアのあの女の人のことは聞けなかった。
…………
………………
……………………
「ふう……」
次の日、一人で買い物の帰り道。私は金魚屋さんの前でまた立ち止まっていた。
ここで、フロリアが女の人と一緒にいるのをみたのよね・・・…。
「はあ……」
「ため息なんてついてどうしたの? アンニュイな君もまた素敵だけどね」
「きゃあ!」
突然、話しかけられて、しかもそれがフロリアだったなんて、こっちの気持ちを見透かされたみたいでドキドキしちゃうじゃない。
「ふ、フロリア……! 今日は……恋人と一緒じゃないのね」
「え? 僕の恋人は目の前にいるけど」
「もう、からかわないで。この間一緒に歩いてた綺麗な人のことよ」
「……ああ、彼女ね。違うよ、恋人じゃない」
「……え?」
「声をかけられて、ちょっとデートしただけさ」
「それ、って……」
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