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しょんぼりしたフロリアがちょっとだけかわいく見えて、私は金魚を受け取った。
「ふふ……やっぱり、同じだ」
「え? 何が?」
「君とハルコ」
「私と……おばあちゃんが?」
「そう。昔ね、同じ理由で怒られた。すごい剣幕でね」
「……」
「あんなに怒ったハルコははじめてだったよ。驚いたなあ」
「へえ……」
「なんだか彼女が戻ってきたみたいで、……少し、嬉しかったのも確かだよ」
「……私は、おばあちゃんの代わり?」
「そんなことないさ。誰でも、誰かの代わりなんてならない。君は特にね」
「もう、また上手いこと言って」
「本心を言っただけなのに、つれないね」
綺麗な顔が極上の笑みを浮かべたその矢先……。
ぐう~
「今のおなかの音、フロリア?」
「や、やあ、晩ご飯がまだだったからね、は、ははは」
「ふふ。フロリアの分はロイが食べちゃったから、これから何か作るわ」
「優しいね、君は」
「ホットケーキなんてどう? メイプルシロップをたっぷりかけてね」
「……そんな意地悪な君も素敵だよ」
「ふふ。冗談よ。甘くないパンケーキを焼いてあげる」
「やっぱり、君は慈愛あるれる女の子だよ」
「食べ盛りの子供3人、育ててますから。それに今日から一人、増えたけどね」
「……え?」
「この子にもごはんあげなくちゃ、でしょ?」
そう言って、私は金魚の入ったビニール袋を持ち上げて見せた。
「変ね……」
この間、フロリアが買ってくれた金魚は、鉢に入れてリビングに置いていたんだけど。
鉢が、からっぽ。……まさか。
「どうした?」
「あ、ユーゴ。ねえ、ここにいた金魚、知らない?」
まさか食べちゃうなんて………ううん、そんなこと。
それにロイもユーゴもあの金魚は気に入っていたはずだし。
「広いところに、放してあげた」
え? じゃあ海か川に流しちゃったの!?
「だだだめよ! あれは外の世界じゃ生きられないのよ!」
「家の中だから、安心して」
「え、じゃあどこに?」
「フンフンフ~ン。お、どうした? 2人とも」
「ユーゴが金魚をどこかにやっちゃったのよ」
「ふ~ん、ま、風呂を沸かしたからそういう話は風呂上りにな!」
「え……」
いつも無表情なユーゴの顔色が……もしかして。
「金魚、お風呂に……」
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