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「ええええええ!!」
タッタッタッ
お風呂場では。
蒸気のなかでもはっきりとわかる赤、そしておなかの白さ。
……間に合わなかった。
「……」
「わ、悪いっ! ちゃんと見てから沸かせばよかったな」
「ごめん……」
ふたりとも、しょんぼりとしちゃってる。
「いいの、誰が悪いわけじゃないわ」
私は両手でそっと金魚をすくいあげた。
……もう少しで泣きそうだったけれど、この子たちの前では、我慢した。
泣いたら、この子たちがもっと傷つくから。
夕ご飯の買い物からの帰り道、私はこの間の露店を探してみた。
「やっぱり、いないわよね、もう……」
あのお店がまだあったからといって、どうにもならないことだけれど。
「フロリアに、なんて言おう……あら?」
その時。
「フロリア、また、あの女の人と……!」
フロリアが以前見かけた女の人と楽しげに歩いていた。
こっちに気づいたのか、フロリアはにこやかに手を振ってきた。
「……!」
気がついたら、走っていた。
「あ、待って!」
また、同じことの繰り返し。……でも、今度はもう金魚はいないんだわ。
仲をとりもってくれた赤い金魚は。
「冷えるわね……」
夜の公園で、たったひとり。私は金魚のお墓を作りにきていた。
3人には内緒で。……特にフロリアには。
でも。
「ついてきたちょうだいなんて言わなかったわよ、フロリア」
「夜は僕の時間だからね。散歩のルートが偶然同じなだけだろう?」
「そう」
無視して、金魚のために綺麗な場所を探す。……ここがいいわ。
両手を使って土を掘っていく。
「君のその綺麗な指が傷ついてしまうよ。僕がやってあげる」
「いいの! 放っておいて!」
「あの女の人のこと、気になってるのかい?」
「そうよ!」
あ、駄目。私、泣いちゃう。
「あんなに約束したのに! 見損なったわ!」
やっぱり駄目。私はぼろぼろと涙を流して泣きじゃくっていた。
「……約束どおり、お金は貰ってないよ。会いたいと言われたから会っていただけだ」
はじめて聞いた、フロリアのおろおろした声。
「そんなんじゃないの! 好きじゃない女の人となんて!」
「……綺麗な顔が台無しだよ?」
「いいの! フロリアったら、ぜんぜんわかってない!」
「……君って子は」
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