第1章

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 アマテラスって……なんだっけ? って感じだから、余計に虚しいよ~。  「溜息なんて、聞き捨てならないね」  「ふ、フロリア!?」  びっくりした~。  「何かあったのかい?」  何よ。なんでもないって顔して。  「……自分の胸に聞いてみれば」  「僕の胸?」  付き合うって宣言した直後にこれなんだから、もう知らないわよ。  身に覚えがないって言わんばかりのフロリアを見てるとむかむかしてくる。  私はフロリアの方を見ないようにして、ベランダへ避難した。  あ~あ。空はこんなに綺麗なのに、なんでこんなにブルーなんだろ。  「もしかして、さっき、商店街にいた?」  後ろでフロリアの声がする。  だけど、返事をする気になんかなれなくて、私は空を見ていた。  「そうか。見ていたのか……」  そんなしおらしい声を出したって知らないから。  「そうか。妬いていてくれるわけか。それは嬉しいな」  ふ~ん。私にも、あの女の人にも同じようなこと言うわけだ。  「すねてる君もかわいけど、できたら、こっちを向いてくれないかな?」  見るわけないじゃない。  「まったく。仕方ないな。君は、本気で僕が女性になら誰にでも優しいと思っているのかい?」  「そうでしょ?」  振り向かないまま言ったら、フロリアが肩に手を置いてきた。  「それは違うよ。僕は、女性には声はかけない。声をかけてきた女性を拒むことはしないけど……」  「それじゃあ、同じことじゃない」  言いながら、フロリアを置いて、部屋に戻る。  「わかった。君がそう言うなら、これからは声をかけられても拒むことにするよ。ただ、声をかけられるばかりは、ね……」  フロリアが後ろからついてくる気配がしたけど、私は振り向きもしないで、机に向かった。  「わかってるわよ。フロリアはもてるものね」  「……そうだね」  んっ? どうしたんだろ? なんだか悲しそうな声をしてる。  そう思った時だった。  「もう女性の誘いには乗らない。だから、君が僕の望みを叶えてくれないと困るよ」  切ない声で言ったフロリアが、ふいに背中から私を抱き締めてきた。  急に耳元で響いた声にドキリとして、私は言葉も返せない。  「僕は君だけのものになるよ。だから、かなた、君も僕のものになって」  フロリアが低く囁いて、耳をくすぐる。  「あっ……」
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