第31章 秀明の気苦労

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「一体、何があったんですか? 美子姉さんと美実姉さんが揃って変なのは、日中お客が来たせいですよね?」  その問いかけに、秀明は確認を入れる。 「内容は聞いていない?」 「はい。美恵姉さんも美野姉さんも、谷垣さんまでだんまりで。美樹ちゃんは、お客さんが来て帰ったしか言わないし。お義兄さんは美子姉さんから聞きました?」 「一応、軽くはね。今日ここに顔を出したのは、淳の両親だ」  秀明が端的に教えると、美幸は驚愕して目を丸くした。 「はぁ!? そんな予定、ありませんでしたよね?」 「約束も無しに、押し掛けて来たらしいな」  それを聞いた美幸が、がっくりと項垂れる。 「もうそれだけで、修羅場って分かりました。聞いても楽しくない事確実なので、これ以上の説明は結構です。その場に遭遇しなくて良かった」 「美幸ちゃんの、そういう察しの良いところは好きだよ?」 「ありがとうございます。ところでお義兄さんは、これからどうするつもりですか?」  そう真顔で問われた秀明は、直前の笑みを消して肩を竦めた。 「どうもこうも。取り敢えず場当たり的に、できる事をしていくしかないだろうな」 「そうですよね。これからどうなるのか、見当もつきませんし」 「そういう事。じゃあ、俺も休ませて貰うから」 「はい、おやすみなさい」  お互いに難しい顔付きで挨拶をしてから、居間に一人だけ残った美幸は、しみじみと呟く。 「美子姉さんと小早川さんとの板挟み状態になってるのに、落ち着き払ってるわね秀明義兄さん。さすがだわ」  そんな風に義妹の信頼と尊敬を上乗せした秀明は、廊下を歩きながらろくでも無い算段を立てていた。 「さて、連中を呼びつけるにしても、ある程度必要なネタを準備しておかないとな」  そして自室に戻るまでに、頭の中で計画を一通り手早く纏め上げた秀明は、奥の寝室で休んでいる美子を起こさない程度の声量で、電話をかけ始めた。 「社長、どうかされましたか?」  桜査警公社副社長の金田は、夜にも係わらずいつも通りの口調で応じたが、秀明は流石に少々申し訳なく思いながら頼み事を口にした。 「夜分すまん。大至急調べて欲しい事ができてな。だが一つや二つでは無いし、色々面倒な上、できれば来週の週末までに調べて貰いたいから、規定の割増料金の倍額を払うので、何とか都合をつけて貰えないか?」  その申し出に、彼は笑いを含んだ声音で言葉を返してくる。
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